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2012/04/22

25年ぶりの「ラプソディ・イン・ブルー」

1980年代にずいぶん山下洋輔さんのオケアレンジを任された。山下さんとオケが対決するためには、原曲をなぞるだけではオケが目立たない。山下さんもやりにくい。オケが山下さんにちょっかいを出して、しかも山下さんが自由に乗ってくるような仕掛けを作らなくてはならない。
当時、すでにPCで楽譜を書き始めていたので、パートの移行や移調が楽だった。そのため同じ「ラプソディ・イン・ブルー」でも1管編成から弦のみ、弦管4人づつ等バリエーションがあり、山下さん関係で家にあるスコアだけでも20cm以上積み上げてある。
ただ、シリーズが終わると再演される事はほとんどなかった。

山下さんからメールがあり、この中の「ストリングスのみのラプソディ…」を25年ぶりに再演するというので、昨日、演奏会場の神奈川県の二宮町まで聴きに行った。
Yamashitar
このアンサンブル ラディアントのコンマス=白井英治さんは、当時このラプソディをサントリーホールでオケの一人として演奏している。それがあまりに面白かったらしく、自分のオケで山下さんを迎えこれを演奏することが夢だった。
まさしくこの夢を叶えるための演奏会だったようで、演奏の前に白井さんと山下さんはこれに至る経緯を説明しだした。
いやあ驚いた。ガーシュインを差し置いて、こんなにアレンジとアレンジャー本人の事にスポットを当ててくれた事は今までなかった。「この僕の後輩である上野君のアレンジは素晴らしいのだが、すごいのはお構いなしに自分の曲を中に入れてくる。もちろんそういうことは大歓迎だ。しかも中には図形譜や象形文字まで入ってくる事もある」と、実に嬉しい解説が入る。

僕としてはただめちゃくちゃにやるだけの混沌は避けたく、事実、別な曲には、落語の喧嘩の台詞をそのまま楽譜にして音にさせる事もあった。

山下さんの演奏のすばらしさは言うまでもないが、(おそらく白井さんの当時味わった感覚を自分なりにイメージした結果だと思うが、)最初の静けさから最後に至までのテンションの上がり方が、あたかも冒険スペクタクルでも味わっているほどに興奮してしまった。
僕としてはガーシュインではない別な音楽語法の異物を次々ぶつける事で、シュールリアリズム的な化学反応がはじまり、ソナタなどより何十倍も面白い展開部となって宇宙にまで飛び出したような所まで行のく。そしてそこからちゃんとニューヨークのガーシュインに戻ってくる所で感動のラストを迎える。そんなストーリーを特に白井さんが理解しているからこそ、会場全体が感動に結びついたと思う。

このコンサート、591名のキャパが2ヶ月前から満席でsold out。近くに住む後輩で山下さんとも共演している笙の演奏家=東野珠実さんも、特に山下さんと僕のコラボが聴きたいのにチケットが買えず、マネージャーの村松さんに頼み込んで補助椅子を通路に出してもらう程だった。
東野さんにも村松さんにもこのアレンジをとても賞賛していただけたことは嬉しかった。
四半世紀前の自分の中の消えそうな軌跡が蘇り、なおも新たな輝きを見たという最高の一日だった。
Yamashitaga_2

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コメント

上野哲生さま

アンサンブル・ラディアント団員の山村と申します。
このたびははるばる二宮までお越しくださってありがとうございます。
たまたま上野さんのこのブログを見つけ、演奏会のことを書いて下さっていることを白井先生はじめ団員全員に伝えました。

今回の演奏会は、私たちにとっても大変チャレンジングな試みでしたが、上野さん、山下さん、白井先生の互いの縁から生まれたすばらしい機会。そこで演奏できたことを感謝しています。お客様に感動していただけたのは実に嬉しいのですが、なんといっても演奏している側が(もしかしたら一番・・)楽しかったのは言うまでもありません。
終演後、ぜひ残っていただいて我々の「おいしいレセプション」にお誘いしそこねてしまったことが、返す返すも残念でなりません。白井先生の奥様がそれはもう、たいへん悔しがっておられます。なんとかこの落とし前をつけなければと思っていますが。
我々は結成12年の、アマチュア音楽家主体の合奏団ですが、白井先生のご指導のもと、プロの先生方の手を借りながら、これからも新たな可能性を探っていきたいと思っています。

さて私事ですが、舞台から上野さんのお姿を見て「どこかでお会いしたような・・」と思っていました。それが、このブログを読んで明らかに!
「え、カテリーナ古楽合奏団?」「ロバの音楽座?」「リュート奏者}
ただちには、古楽とガーシュインのアレンジが結びつきませんでしたが、どちらも上野さんのお仕事なのですね。
かつて、子どもたちが小さい頃に「おやこ劇場」で「ロバの音楽座」の公演を何度か聴かせていただきました。我が家のCDの棚にはガランピーポロンのCDもありました。ジャケットには上野さんのお姿もはっきり写っています。驚きました。
上野哲生三というお名前を載せたプログラムを作っておきながら、まったく気づかなかった・・・。いろんなところにご縁はあるものだと、つくづく思いました。

ついでにといってはなんですが、上野一家の動く年賀状も拝見して朝から爆笑しました。すみません。
上野さんのさらなるご活躍をお祈りしています。どうぞお元気で。

山村ゆみ子

投稿: アンサンブル・ラディアント ヴィオリスト | 2012/04/25 15:17

アンサンブルラディアント演奏会にお越しいただき、本当に有難うございました。白井英治先生奥様から、編曲の方がご夫婦でお見えになると聞いていましたので、舞台上で白井先生に「上野さん紹介してください!」とお願いし、うっかりされていた先生にマイクを取りに走らせてしまいました。(私は1stVn第二プルト内側で弾いていました)ご紹介できて本当によかったです。 ラプソディ・イン・ブルーはこれまで何度も聴いていたものの弦楽版があったなんて全く知らず、譜面を見てもどう演奏すべきかお手上げの部分もあり、正直不安が一杯でした。でも、4月初旬に初めて山下さんと練習をさせていただいて、やっと全貌が見え、半分不安ながらもワクワクし始めました。そして、どんどんノリがよくなっていき、本番は舞台上でも最高に楽しめました!上野さんのブログを今朝知り、さらに感激しています。弦楽で地味にやっている我々にもできるラプソディーを書いていただき、感謝です!今後のご活躍お祈りしています~~

投稿: 白石かず子 | 2012/04/25 17:09

アンサンブル・ラディアントの山村さん、白石さん。コメントありがとうございます。
たしかに私は「ロバの音楽座」での古楽演奏家を本業とし、あまり積極的にはやっていませんが、わずかに知りあいに頼まれた編曲や委嘱作品をライフワークのようにやっています。
実際には山下さんの仕事はロバの音楽座を始める前から幾つかありまして、「題名のない音楽会」で「砂山」のオケパートを編曲して、好き勝手な事をさせていただきました。

自分の話になりますが、もともとビートルズやプログレッシブ・ロックが好きだったのですが、様々な映像音楽に刺激を受け、もっと新しい音楽をやりたいと思い、クラシックも満足に知らないまま音大の作曲科に入りました。とくにオケを使った現代音楽に走り、ついには当時まだあまり使われていないシンセを持って、得意なエレキと合わせて前衛音楽をやったりしていました。
その新しい音楽の果てに出合ったのが「カテリーナ古楽合奏団」の古楽で、さらにそこから生まれた「ロバの音楽座」ではクラシックからジャズやロックまで全ての要素を含む事が可能だったので、自分の様々な特性を余すことなく生かす事が出来ると思いました。
山下洋輔さんが僕に「立川近郊に引っ越したいから家を探して欲しい」と連絡があった時、たまたまロバのリーダーの松本の家の前(米軍ハウス)が空いていたので、それからロバと山下さんをのご近所づきあいが始まり、そのうち山下洋輔とロバの音楽座の「もけらもけらコンサート」が生まれるのです。
そんなわけで山下さんと僕とロバの関係は音楽業界的には遠いようで案外近かったりするのです。

ロバの音楽座は今年で結成30年になり、親子3世代にわたって聴くような事もあるようです。立川にキノコのようなロバハウスという建物を本拠地とし、月一でライブもやっています。連休中も色々あります。お時間があればHPを覗いてみてください。
http://www.roba-house.com/

うちの年賀まで観ていただいてありがとうございます。まあこんなにいろんな事をやっている人間なので支離滅裂でありますが、音楽を楽しんで欲しい、希望を感じさせたい、面白くしたいと思うのは皆さんと同じです。
先日の演奏会は本当に面白いものを観せていただき、心がワクワクしました。僕も音楽会の事を話題にする事も多くないのですが、書いて良かったです。こうやって生の声を聴けて嬉しいです。
演奏会の日は明くる日が大事なロバの公演だったため、いずれにしても長居は出来ませんでした。何か機会があれば皆さんとゆっくり一献を交わしたいと思います。

どうぞ他の方々にもよろしく。  

投稿: 上野哲生 | 2012/04/25 18:08

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